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スウィフト『桶物語』解説あらすじ

スウィフト
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始めに

 スウィフト『桶物語』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

風刺作家

 ​​スウィフトは古今論争(古典こそが至高か、現代が優れているか)において古典派を支持していました。​サモサタのルキアノスは2世紀の風刺作家ですがら架空の旅行記を通じて社会を皮肉る手法は、後の『ガリバー旅行記』の直接的な原型と言われています。​ホラティウスとユウェナリスはローマの詩人で、スウィフトの風刺には、ホラティウスのような滑稽な皮肉と、ユウェナリスのような激しい憤りの両面が混在しています。


​ ラブレーは​フランス・ルネサンス期の作家で、『ガルガンチュワとパンタグリュエル』で知られますが影響があります。。巨大な身体、猥雑なユーモア、そして学問や宗教に対する徹底的なパロディ精神は、スウィフトに大きな影響を与えました。


​ サー・ウィリアム・テンプルは​作家というよりは政治家・外交官ですが、若きスウィフトが秘書として仕えた人物です。テンプルから政治の裏側や、明晰でバランスの取れた散文スタイルを学びました。また、テンプルの古典擁護の姿勢が、スウィフトの保守的な思想の土台となりました。

 スウィフトは『桶物語』『書物合戦』などで作家として認められ、これはアレキサンダー=ポープやジョン=ゲイ、ジョン=アルバスノットなどとの交流をもたらします。そして結成されたスクリブレルス・クラブの核を形成しました。こうした作家同士のつながりもあり、風刺的な内容の作品を展開しました。

キリスト教、衒学パロディ

 物語の核心は、ピーター(カトリック)、マーティン(英国国教会)、ジャック(ピューリタン)という三人兄弟の寓話です。父親(神)から授かった決して手を入れてはいけない上着(教義)を、彼らは流行に合わせて勝手に改造したり、遺言書(聖書)を自分たちの都合の良いように解釈したりします。長男ピーターの傲慢さや、末っ子ジャックの極端な狂信ぶりを通じて、当時のキリスト教諸派の争いと、本来の教えからいかに遠ざかっているかを痛烈に批判しています。


 ​スウィフトはこの作品で、当時の新しい学者や作家たちが、古典を軽視し、中身のない衒学的な文章を量産していることを攻撃しています。本編よりも長い序文や、脈絡のない脱線を意図的に挿入することで、当時の中身はないが注釈だけは立派な本をパロディ化しています。


​ 深い洞察よりも、カタログ的な知識や新しいものを追い求める風潮を浅はかであると断じています。作品後半の狂気に関する脱線では、人間の本質について非常にシニカルな視点を提示しています。スウィフトは幸福とは、騙され続けていることであるという趣旨のことを述べています。真実の醜さを直視せず、表面の虚飾に満足している人間社会の滑稽さを描いています。

物語世界

あらすじ

 普通の小説のように起承転結がある物語ではありません。「3人兄弟の寓話」と、作者になりきった人物による脱線が交互に繰り返される、非常にトリッキーな構成になっています。


 ​ある父親が、3人の息子(ピーター、マーティン、ジャック)に1着ずつ上着を遺して死にました。父親の遺言はこの上着に決して手を加えてはならないというものでした。最初は遺言を守っていた兄弟ですが、都会に出ると流行の飾り紐や金銀の刺繍を付けたくなります。彼らは遺言書(聖書)の文字を強引に解釈したり、都合の悪い部分は無視したりして、どんどん上着を派手に改造していきます。長男のピーター(カトリック)が権力を握り、自分を「主(ロード)」と呼ばせ、弟たちを支配し始めます。弟たちはピーターの横暴に耐えかね、家を飛び出します。マーティン(英国国教会)は、慎重に飾りを取り除き、なるべく元の形に戻そうとします。ジャック(ピューリタン、カルヴァン派)は、ピーターを憎むあまり、上着を乱暴に引き裂いてボロボロにしてしまいます。結局、兄弟たちはバラバラになり、自分たちの正当性を主張して争い続けます。


 物語の合間には、当時の自称・博識な作家を装った語り手による、中身のない脱線が何度も割り込みます。「批評について」「狂気について」といったテーマで、もっともらしい理屈をこねくり回しますが、その内容は支離滅裂。本に中身がないのは、読者がバカだからだ、空白が多いのはそこに深い意味があるからだ、といった逆ギレのような理屈で、当時のスカスカな新刊本や学者たちを笑いものにしています。

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