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ヴィアン『日々の泡』解説あらすじ

ボリス=ヴィアン
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始めに

 ヴィアン『日々の泡』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ヴィアンの作家性

ヴィアンを語る上で外せないのが、バーノン=サリバンという架空のアメリカ人作家になりきって書いた一連の犯罪小説です。彼はアメリカの暗黒小説を深く愛し、翻訳も手掛けていました。

​ その際にはチャンドラーの文体やハードボイルドな世界観に強く影響を受けました。また​『郵便配達は二度ベルを鳴らす』などで知られるケインの、乾いた暴力性とエロティシズムから刺激されました。

​ ​ヴィアンは空想科学(パタフィジック)学会の重要メンバーでもありました。論理を飛び越えたナンセンスや遊び心をそこから受け継いでいます。​アルフレッド=ジャリは『ユビュ王』で知られる、「パタフィジック(形而超学)」の提唱者でした。クノーはヴィアンの友でした。そこから実験精神に影響しました。

​ ​当時のパリ、サン=ジェルマン=デ=プレの精神的支柱であった哲学者たちとも密接に関わっていました。『うたかたの日々』には、サルトルをモデルにした「ジャンソール=パルトル」という人物が登場します。尊敬しつつも、冷ややかな視線でブームを捉えていたところもあります。

​ またジャズからの影響もあります。​デューク=エリントンはヴィアンにとって尊敬の対象でした。彼の文章が持つ即興性や、独特のスウィング感は、言葉でジャズを演奏しようとした結果とも言えます。

​タイトルの意味

​ ​物語の核となるのは、主人公コランとクロエの純粋な愛です。しかし、ヴィアンはその美しさを描くと同時に、それがいかに簡単に外部の要因によって崩壊するかを冷徹に描き出しています。

​ クロエの肺に宿る睡蓮は、美しさと死が隣り合わせであることを象徴しています。愛が深まるほど、死の影もまた色濃くなります。タイトルの「泡」のように、幸福な時間は一瞬で消え去る儚いものであるという無常観が全編を貫いています。

​資本主義批判

 ​ヴィアンは、人間を機械の歯車のように扱う労働のシステムを強く批判しています。

​ クロエの治療費を稼ぐために、富豪だったコランが過酷な労働に身を投じる様子は悲痛です。特に人間の体温で銃を育てるという描写は、労働が生命力を吸い取り、最終的に死を生み出すという強烈な皮肉になっています。

​ また​当時のパリを席巻していた実存主義ブームに対する、ヴィアン流の皮肉も大きなテーマです。哲学者パルトルに心酔するシックの姿は、思想さえも収集品や消費の対象にしてしまう現代人の滑稽さを描き出しています。 思想を追い求めるあまり、破産し、人間関係を壊していくシックの末路は、盲目的な崇拝への警告とも取れます。

​幻想文学

 ​この作品では、登場人物の心の状態が、物理的な世界に直接影響を与えるという設定がとられます。

 幸福な時は明るく広々としていたアパートが、クロエの病状が悪化し、絶望が深まるにつれて、壁が迫り出し、天井が低くなり、光が失われていきます。

  世界は個人の感情に対して優しくなく、むしろ感情の衰退に合わせて物理的に崩壊していくという、シュルレアリスム的な恐怖が描かれています。

物語世界

あらすじ

 動物や無生物が人間の感情を映し出すシュールな世界。コリンは裕福な青年で、従者ニコラスと、忠実な親友チックと共に暮らしています。莫大な財産と贅沢な生活を送っているにもかかわらず、コリンは恋人を切望しており、チックの恋人アリッサムに想いを寄せています。

 この抑えきれない思いに駆られたコリンは、友人のパーティーで出会ったクロエに瞬時に恋に落ちます。駆け落ちに近い恋の末、コリンは盛大な結婚式を挙げ、クロエと結婚します。そして、チックが結婚を渋る中、コリンは財産の4分の1を二人に遺贈し、二人の結婚を許します。

 ハネムーン中、クロエは咳と胸の痛みが主な症状の謎の病気にかかり、コリンと共に旅行を早期に切り上げます。帰宅後、クロエは気分が良くなりますが、回復も長くは続きません。買い物中に気を失い、咳の発作が再発します。

 最終的に、クロエは肺スイレン症と診断されます。珍しい病気で、周囲に花を飾ることによってのみ治療できます。治療費は高額で、コリンはすぐに資金を使い果たしてしまい、クロエの治療費を貯めるために低賃金の仕事に就きます。

 クロエの病気が進行するにつれて、コリン、チック、ニコラスそれぞれのアパートはすべて朽ち始め、ニコラスは一週間で突然何年も老けてしまいます。

 一方、チックは哲学者ジャンポール=ハートルに執着し、ハートルの著作収集に全財産、全力を注ぎます。アリスムは、チックが自分の膨大なコレクションに目を付け、自分を無視していることに憤慨し、ハートルに本の出版をやめるよう説得することで、チックの経済的救済を図ります。

 しかし、アリスムはハートルを殺害します。さらに、ハートルの著作を扱っていた書店主たちに復讐するため、彼らを殺害し、店に火を放います。

 またチックは脱税と密輸タバコの容疑で警察の突然の訪問を受けます。罪の償いとしてハートルの本の引き渡しを拒否したため、現場にいた警官の銃撃によりチックは死亡します。

 結局、コリンはクロエに花を贈ろうと奮闘するが無駄に終わり、クロエの死に対する彼の深い悲しみは、悲しみから逃れるために彼のペットのネズミが自殺するほどでした。

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