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宮沢賢治『風の又三郎』解説あらすじ

宮沢賢治
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始めに

宮沢賢治『風の又三郎』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

ロマン主義

 宮沢賢治は、萩原朔太郎、山村暮鳥、アンデルセンのロマン主義からの影響が顕著です。

 朔太郎は独特の口語的な幻想文学を展開しましたが、本作もそうした要素が見て取れます。

 山村暮鳥もキリスト教の影響を受けつつ、独自のロマン主義を展開しました。

 アンデルセンもロマン主義を代表する詩人、童話作家で、独特の幻想文学や詩的世界を特徴とします。

田中智学と日蓮宗

 宮沢賢治は日蓮宗で、田中智学の影響を受けました。

 日蓮宗の開祖の日蓮は、鎌倉時代を末法とみなし、法華経を滅後末法の世に向けて説かれた経典とみなし、「如来寿量品」を、滅度後の衆生の救済を目的として説かれたものとみました。日蓮にとっては末法の衆生を済度しうる唯一のものが「法華経」で、「真言亡国・禅天魔・念仏無間・律国賊」と他宗への排他的な「四箇格言」がよく知られます。

 日蓮宗では法華経を繰り返すことで、死後に霊山浄土で釈迦牟尼仏に会って成仏できるとしています。これは現世と後世を一貫して浄土ととらえ、霊山浄土は、現の浄土です。

 田中智学の日蓮主義とは、日蓮仏教の思想を幅広い社会的な領域へ押し広げようとする運動でした。

イーハトーブ

 賢治の文学を特徴づけるイーハトーブとは、宮沢賢治の造語で、賢治の心象世界中にある理想郷のことです。故郷岩手県をモチーフとしたとするのが通説ですが、そうではないふうにも解釈できます。

 賢治の物語世界は、日蓮宗が現世と後世を一貫して浄土ととらえるのにも似て、現実と幻想の間に位置する神秘的な空間です。

又三郎の正体

 タイトルになっている「風の又三郎」とは、転校生高田三郎と、風の精霊のことを示します。

 山あいの小さな学校(分教場)に変わった姿の転校生高田三郎が現れ、みんなは彼を伝説の風の精、風の又三郎だと思います。

どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう

 以上は、三郎が伝える風の歌で、どうもこれを解釈すると、伝説の風の精霊とは、青いくるみやすっぱいかりんといった、まだ若い実であるところの子供たちを殺そうとするとか、試練を与えるような存在と見えます。

 又三郎が来てから、主人公の嘉助など、生徒たちはさまざまな冒険をし事故死や溺死と隣り合わせになりながらもそれを乗り越えながら、大人になっていきます。向かい風のような苦難や通過儀礼を経て、主人公たちは大人へと近づいていきます。

 一方で、三郎が伝説の風の精、風の又三郎だというのは、単に嘉助ら子供たちが勝手にそう解釈しているに過ぎないという見方もでき、実際のところ三郎が風の又三郎だというのも、明確な根拠はありません。最終的に、嘉助らは三郎をちょっといじめのような形で疎外して笑いものにし、その後で転校してしまうのですが、もしかしたら三郎はちょっとズレているだけの子供だったのかもしれません。

 主人公は試練を乗り越えて大人になったのか、それとも恣意的な理屈を拵えて協調性がない余所者を排除しようとする「大人」になったのか、解釈に委ねられています。

物語世界

あらすじ

 9月1日(木曜)、山あいの小さな学校(分教場)に変わった姿の転校生高田三郎が現れます。みんなは彼を伝説の風の精、風の又三郎だと思います。
 9月2日(金曜)、彼は学校で変わった態度を見せ、みんなを緊張させます。
 9月4日(日曜)、みんなで高原へ遊びに行きます。嘉助が牧場の柵を開けてしまい、逃げた馬を追った嘉助は、深い霧の中で迷って昏倒します。夢の中で三郎がガラスのマントを着て空を飛ぶ姿を見ます。気づくと馬と三郎がすぐ近くにいました。

 9月6日(火曜)、みんなとヤマブドウ採りに出かけた三郎はタバコ畑の葉をむしってみんなに咎められ、また耕助と風について言い争いをするものの、最後には仲直りします。
 9月7日(水曜)、みんなは川へ泳ぎに行き、大人の発破漁に遭遇したり、専売局から来たらしき男から三郎を守ろうとします。
 9月8日(木曜)、また川で遊びます。佐太郎が持参した山椒の粉で毒もみを試みるものの、うまくいきません。やがて天候が急変して不穏な雰囲気となります。雨宿りする木の下でだれかが、こちらへ泳いでくる三郎をはやしたて、皆がそれにならいます。皆に合流すると三郎は震えて追及するものの、全員とぼけて答えないのでした。
 9月12日(月曜)、一郎は三郎から聞いた風の歌の夢を目覚めます。台風に一郎と嘉助は三郎との別れを予感し、早めに登校します。案の定、先生から三郎が前日に転校したと知らされます。

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