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アトウッド『誓願』解説あらすじ

アトウッド
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始めに

 アトウッド『誓願』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

アトウッドの作家性

 ​アトウッドの物語構造の根底には、幼少期に読み耽ったというグリム童話があります。『強盗のむこ』などは直接的なモチーフとして使われています。また『ペンネロピアド』に象徴されるように、古典的な神話を女性の視点から再構築する手法にギリシア神話が影響を与えています。


​ ノースロップ=フライは​アトウッドがトロント大学で学んだ際の恩師であり、著名な文学批評家です。フライの文学の類型学は、彼女の作品の象徴性や構造に決定的な影響を与えました。


​『侍女の物語』を書く際、彼女が明確に意識していたのがイギリスのディストピア作家たちです。オーウェル『1984』からは強い影響を受けています。ハクスリー『すばらしい新世界』に見られる、管理された社会の不気味さも彼女の血肉となっています。


​ ​アトウッドの作品に見られる心理的ホラーや女性の抑圧というテーマは、ヴィクトリア朝の作家たちと繋がっています。ブロンテ姉妹の『ジェーン・エア』や『嵐が丘』に見られる女性の情熱と孤立、そしてゴシック的な雰囲気は、彼女の初期作品(『食べられる女』など)に色濃く反映されています。スザンナ=ムーディーは19世紀カナダの開拓民女性で、アトウッドは彼女をテーマにした詩集を書くほど、その未開の地での生存という視点に惹かれていました。 


 またポーやロバート=グレーヴスに影響されました。

ディストピアの終わり

 ギレアドという全体主義国家が、いかにして自らの矛盾と腐敗によって崩壊していくかが大きなテーマです。指導者たちの不倫、汚職、権力争いなど、聖書を盾にした建前の裏にある醜い現実が描かれます。彼女はシステムの番人でありながら、同時にそのシステムを破壊するための爆弾を抱え持ちます。生き残るために怪物になるという生存戦略がもたらす悲哀と皮肉が強調されています。


​ ​本作は、立場も育ちも異なる3人の女性の視点で進行します。ギレアドで育ち、無知を強いられたアグネス。カナダで自由を謳歌しながら育ったジェイド(デイジー)。そして、システムを構築したリディア。彼女たちがそれぞれのやり方で真実を求め、手を取り合う姿は、どれほど過酷な状況でも、女性たちの知恵と連帯が歴史を変える鍵になるという希望を象徴しています。


​ ​タイトルの『誓願』が示す通り、記録を残すこと自体が抵抗の手段として描かれています。隠蔽された不都合な真実が、どれほど強固な国家をも揺るがす強力な武器になることが示されます。物語の最後に置かれた第13回ギレアド研究シンポジウムのパートは、現在起きている悲劇も、いつかは過去の歴史として分析される日が来るというメタ的な視点を与え、読者にあなたは何を記録するのかと問いかけます。

物語世界

あらすじ

 ​3人の語り手が設定されています。リディアおば(アードゥア=ホール手記)は、ギレアドの女性統制システムの頂点に立つ冷徹な権力者です。しかし、裏では指導者層の醜いスキャンダルを集め、体制を壊滅させるための計画を練っています。​アグネス(証言第369A号)はギレアドの司令官の娘として育てられた純粋な少女です。自分が侍女の子であることを知り、望まぬ結婚を逃れるためにおばの修行の道を選びます。デイジー(証言第369B号)はカナダでリベラルに育った少女です。ある日、養父母が爆破テロで殺され、自分がギレアドから連れ出された伝説の赤ん坊ニコールであることを知らされます。


 カナダの反体制組織メイデイは、ギレアドを壊滅させるための決定的な証拠を国外へ持ち出す計画を立てます。その協力者こそが、内部で虎視眈々と復讐を狙っていたリディアおばでした。カナダの少女デイジーは、任務のために変装してギレアドへ潜入します。


 ギレアドの「おば」の拠点であるアードゥア=ホールで、アグネスとデイジーは出会います。そこで二人は、自分たちが同じ母親(前作の主人公・オブフレッド)を持つ実の姉妹であることを知ります。


​ リディアおばは、指導者たちの汚職や犯罪を記録したマイクロドットを二人に託します。ギレアドの追っ手が迫る中、彼女たちはカヌーや徒歩で国境を越え、カナダへの決死の脱出を図ります。
​ 持ち出された証拠が世界中に公開され、ギレアドの欺瞞が暴かれます。これをきっかけに体制は内部から崩壊を始め、数十年後、ギレアドは歴史の闇へと消えていくことになります。

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