始めに
ディネーセン『アフリカの日々』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ディネーセンの作家性
ディネーセンは、故郷デンマークの伝統と、鋭い人間観察力を先達から受け継いでいます。
ディネーセンはキルケゴールの美的な生き方と倫理的な生き方の葛藤、皮肉に影響されました。またアンデルセンの寓意性からも刺激されました。
ほかにも『千夜一夜物語』の語りやシェイクスピア、クライスト、ゲーテのロマン主義から影響があります。
アフリカでの生活
ディネーセンがケニアでのコーヒー農園経営に失敗し、最愛の人デニス=フィンチハットンを亡くしてすべてを失った後に書かれた作品です。
ディネーセンにとって、アフリカでの生活は神が書いた脚本のようなものでした。農園の倒産や愛する人の死といった悲劇を抗えない運命として受け入れます。
またアフリカの地を、単なる風景ではなく、ひとつの巨大な生命体として描いています。自然の厳しいリズムに従って生きるなかで、 ヨーロッパ的な所有や計算に基づいた文明に対し、アフリカの持つ野生的で根源的な力を対比させています。
ディネーセンは現地の人々(キクユ族やソマリ族など)を異なる魂を持つ友人として描こうとしました。現地の人々の沈黙や儀式、独特の価値を尊重しました。彼らとの交流を通じて、自分自身の西洋的な価値観が相対化されます。
物語世界
あらすじ
・カマンテとルル:最初のセクションでは、農園での日常と、彼女の人生に深く関わった存在が描かれます。 カマンテは潰瘍を患っていたキクユ族の少年です。カレンが治療したことで彼女を信頼し、後に独創的な才能を持つ料理人となります。ルルは、カレンが育てた小鹿で、家の中で自由に過ごし、やがて野生に戻ってからも子供を連れてカレンに会いに来ます。
・農園での射殺事件:ある夜、農園の少年たちの間で誤射事件が起き、死傷者が出てしまいます。当時の植民地法と、キクユ族の伝統的な「補償」の考え方の対立が描かれます。カレンは現地の人々の価値観を尊重し、複雑な示談交渉に立ち会うことで、彼らの精神世界に深く触れていきます。
・農園への来訪者:カレンの農園を訪れた個性豊かな友人たちが描かれます。デニス=フィンチハットンは飛行士であり、自由を愛する貴族です。カレンに空の旅を教え、彼女の語る物語に耳を傾けます。バークリー=コールも同じく貴族の友人で、デニスとともに、当時のヨーロッパ社会の枠組みから外れた、自由で高潔な魂を持つ人物として描かれます。
・移民の手記から:この章は、アフリカでの生活の中でカレンが感じた短い瞑想や、奇妙な出来事、出会った人々についての断片的な記録です。
・農園を去る:コーヒー相場の暴落と干ばつにより、農園は借金で立ち行かなくなります。そうしてカレンが農園を去る直前、デニスが飛行機事故で亡くなります。彼の葬儀と、その墓にライオンが現れたことが描かれます。カレンは自分の財産を失いながらも、住む場所を失うキクユ族の人々のために新しい土地を確保しようと奔走します。そして1931年、何もかもを失った状態で、たった一人で船に乗り、アフリカを去ります。




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