始めに
シラー『群盗』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ドイツロマン主義、古典主義
シラーは、ゲーテと並ぶドイツ古典主義の代表者です。初期の劇作品群はシュトゥルム=ウント=ドラング期に分類され、これはロマン主義ですが、ゲーテと比べるとキャリアの中で、次第に抑制されたスタイルへのこだわりを見せ、破綻もはらむ自由なスタイルのゲーテの作風とはやや違いが見えます。
シラーはゲーテやシェイクスピアからの影響が大きく、本作も四代悲劇のような、すれ違いや性格がもたらす悲劇を描きます。
題材と影響
シラーは本作について、ヨハン=アントン=ライゼヴィッツの戯曲『ターラントのユリウス』(1774年)にインスピレーションを受けました。
またヴィラースハウゼンのトロイシュ=フォン=ブットラーの家族が元とされます。原作の一つとされるのはクリスティアン=シューバルト『人間の心の歴史について』と、トロイシュ=フォン=ブットラー兄弟の事件に関する実話です。
本作の悪役、フランツのモデルであるヴィルヘルム=フォン=ブットラー少佐はオーバーシュタインバッハ城でエヴァ=エレオノーラ=フォン=レンタースハイムと結婚します。彼女の父エアハルト=フォン=レンタースハイムはてんかんとアルコール依存症だったため、後見人の下に置かれ、義理の息子として、ヴィルヘルムはその財産を自分で処分する権利を行使します。さらに、ヴィルヘルムの義母ルイーザ=フォン=レンタースハイムには財産があったため、ヴィルヘルムはさらなる利益を図るため、使用人に彼女を絞殺させたのでした。
ロマン主義的テーマ
主人公カール=フォン=モーアは、生まれつき高貴な感性と道徳的情熱を備えた人物として描かれるものの、その道徳的純粋さがかえって現実社会の腐敗と軋轢を生み、彼の行動は徐々に反社会的な暴力と破壊へと堕していきます。ここに見られるのは、若きシラーが感じていた啓蒙主義の自由理念が孕む逆説であり、人間の自然的な自由の欲求が、秩序なき状態では容易に野蛮へと転化し得るという問題です。
この矛盾は、カールが率いる盗賊団そのものの成り立ちに象徴されます。彼らは封建的身分秩序の不正義に対する正当な反抗として結成されるものの、彼らの行為が暴力そのものである以上、その正義は矛盾します。カール自身も、自らの行動原理が理想主義から暴力主義へと変質する過程を自覚しており、その葛藤が作品全体に重苦しい道徳的陰影を与えます。シラーはこの転落を通じて、個人の内的高貴さと、その高貴さが現実の中で持つ危険性を描き出します。
作品のもう一つの大きな軸は、旧体制社会の腐敗への批判です。弟フランツの陰謀、父モーア伯爵の弱さと道徳的盲目、そして官憲の不正と残酷さは、当時のドイツ諸侯国における封建的権力構造そのものの歪みを象徴します。
物語世界
あらすじ
舞台は18世紀中葉のドイツ。モール伯爵の息子で熱血漢のカールは、放蕩生活を悔い父に謝罪の手紙を送るものの、家督の相続を狙う冷血な弟フランツはこれを握りつぶし、代わりに父からの勘当を報せる偽の手紙を兄に送ります。
カールは絶望し、仲間のシュピーゲルベルクにかどわかされて盗賊団に加わり、その頭首になります。カールたちは悪事をするものの、義賊的なこともします。
フランツは、カールの恋敵であったヘルマンと共謀して、父に兄が死んだという偽の報告をします。父はフランツの策略に気づくものの、塔の中に幽閉されます。
その後カールは恋人アマーリエに再会するために帰郷し、変装して父の屋敷を訪れ、アマーリエが自分を愛していると確信します。カールは召使からフランツの悪行を知り、フランツと対面しようとするものの、盗賊団に屋敷を囲まれたために、フランツは自殺します。
しかし助けだされた父も、カールが盗賊になったと知り、ショック死します。そして盗賊団との約束からカールが自分といっしょになれないと知ったアマーリエは、カールに自分を刺させます。
アマーリエを殺した後、カールは盗賊団を抜けて自首すると宣言します。




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