始めに
芥川『邪宗門』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
等質物語世界の語り手
本作品は前作の『地獄変』や『藪の中』同様、等質物語世界の語り手が設定されています。『地獄変』と同一の語り部により物語が進むものの、本作では語り部自身も物語に登場します。
『地獄変』に登場した堀川の大殿の子、若殿が主人公で、この若殿を美化して語っているようであり、信頼できない語り手になっているのは『地獄変』と共通です。
このような語りの背景についての解釈として、語られる対象の悪辣さについて気が付いていないか見ないように努めているか、あるいは対象を恐れているために上辺を取り繕っていつつ批判を滲ませているか、さまざまな取り方ができます。
若殿のキャラクター
本作の若殿は父親の大殿とは対照的な存在とされています。父親の「豪快」とされる人柄とは違って、「繊細で優雅」とされています。父親のことは軽蔑しており、その死に対しても感慨を持ちませんでした。
若殿は『地獄変』に描かれた大殿と比べると穏やかにも見えますが、自分の狙った異性である中御門のお姫様を得るために、言葉巧みに、中御門の平太夫をやり込めるところなどは、父親とは違う狡猾さ、強かさを感じさせます。
未完に終わった内容
本作は未完に終わっています。とはいえ、『地獄変』が為政者と芸術家の対決だったことや、本作の展開を見ていくと、どうも本作は為政者と宗教家、宗教の対決の物語として解釈できそうです。
私淑したアナトール=フランスも、キリスト教には強い関心を抱き続け、キリスト教の中での実践に着目しました。芥川にもキリスト教を扱う『奉教人の死』『南京の基督』があります。
物語世界
あらすじ
堀川の大殿様の子である若殿様は、父親とは容姿、性格、好みすべて正反対で、優しく物静かな人物であったそうです。その生涯で、たった一度だけ、不思議な出来事がありました。
大殿様の死から5、6年後、洛中に摩利信乃法師という名の沙門が現れ、人々を怪しげな力で治療し、信奉者を増やしていました。ある時、建立された阿弥陀堂の供養のときに沙門が乱入し、各地の僧に法力対決を挑みます。誰も叶わず、堀川の若殿様が庭へと降り立ちます。
参考文献
・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』



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