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リルケ『マルテの手記』解説あらすじ

リルケ
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始めに

 リルケ『マルテの手記』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

リルケの作家性

 リルケはデンマークの作家ヤコブセン『ニルス・リューネ』などに影響されました。『マルテの手記』の主人公がデンマーク人である設定や、繊細な心理描写、「独自の死」というテーマは、ヤコブセンから継承します。


​ ロダンからの感化は大きく、​職人のように毎日観察し、制作せよという姿勢を学びました。彫刻のように、対象を客観的に徹底して凝視し、その「物」そのものを言葉で造形する手法を確立します。


​ ​ロダン以降、さらにリルケを客観的な視点へと導いたのがセザンヌの絵画です。感情を排し、色と形だけで存在の本質を捉えようとするセザンヌの姿勢に衝撃を受けました。


​ ​『マルテの手記』における都市の醜悪さの描写にはボードレールの影響も大きいです。ボードレールの詩「腐骸」は、作品の中で重要なキーワードとして登場します。

即物的世界

 『マルテの手記』は、28歳のデンマーク人貴族マルテがパリでの生活を通じて綴る告白録です。


 ​冒頭の有名な一節「私は見ることを学んでいる」にある通り、単に網膜で捉えるのではなく、醜悪なものや恐ろしいものを避けずに直視し、それを内面へと取り込むプロセスを描いています。詩人として成長するために、現実を美化せず、ありのままに受容しようとする孤独な試みが綴られています。


​ ​マルテが彷徨うパリは、病気と死の匂いが漂う不気味な迷宮として描かれます。かつては一人ひとりに固有の死がありましたが、近代都市では病院で大量生産される匿名の死が溢れています。壁一枚隔てた他者の存在や、得体の知れない不安が、マルテの精神を追い詰めます。

愛と記憶

 終盤で語られる「放蕩息子の帰還」の挿話に象徴されるように、誰かに愛されることを重荷と感じ、愛することのみに純粋な自由を見出そうとします。対象を必要としない、あるいは神という究極の不在に向けられた愛へと昇華されていく過程が描かれます。


​ マルテは現在のパリでの苦悩を和らげるかのように、故郷デンマークの貴族としての記憶を呼び起こします。没落していく家系、幽霊、奇妙な出来事。これらは単なる追憶ではなく、マルテという「個」を形成する深い地層として描かれます。

物語世界

あらすじ

 没落したデンマーク貴族の最後の末裔である若き知識人マルテ=ラウリッズ=ブリッゲは、パリで貧困のうちに独り暮らしています。病気がちで部屋に閉じこもり、惨めさ、恐怖、そして神を探すことについて思いを巡らせながら時間を過ごしています。

 マルテは子供時代を語り、亡くなった友人や愛する人、出会った歴史上および文学上の人物を思い浮かべます。また、目撃した幻想的な出来事についても説明します。

 健康が許す限り、マルテはフランスの首都の街を彷徨います。通りを歩き、カフェに入る見知らぬ人をついていくのが彼の楽しみでした。マルテはその人に愛着を抱き、その人の考えや悩みを推測し、苦悩さえも感じ取ろうとします。

 またある時は、取り壊されつつある家の残骸や、舗道の割れ目に押しつぶされた花といった些細な物が、彼の哀れみと奇妙な空想を呼び起こします。

 冬の初めには、ハエの死が死について、現代都市においてあまりにも平凡で非人間的なものとなってしまった人間の死について研究する契機になります。

 二冊目のノートの最後のページは、放蕩息子の寓話を描いています 。ある子が、他者を奴隷にし、習慣の軛に縛り付けるような愛を拒否し、家と家族を捨て去ます。彼は、地上では知られざる秘密の愛、そして彼の高揚感と不満の源泉を探し求めます。しかし、日々の生活の束縛から解放されることで、彼は周囲を取り巻く人間の亡霊に似てしまうことを避けています。その代わりに、彼は死と向き合い、それを克服することで、死が人生を補完するものとなる高次の現実へと到達しようとします。

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