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エレナ・フェランテ『ナポリの物語』解説あらすじ

エレナ・フェランテ
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始めに

エレナ・フェランテ『ナポリの物語』解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

エレナ・フェランテの作家性

 エレナ・フェランテが最も決定的な影響を受けたとして挙げているのは、イタリアの女性作家エルサ・モランテです。覆面作家としてのペンネーム「Elena Ferrante」自体もモランテへのオマージュとされています。16歳の時に読んだモランテの長編『嘘と魔法』から女性の欲望や内的世界を中心に据えても壮大な文学になり得るという衝撃を受け、執筆の決定的な原動力を得ました。

 19世紀の古典作家(フローベール、トルストイ、ユーゴー)の描く男性主人公の大胆さや物語のスケール感に感銘を受け、同等の力強さを持つ女性主人公を描きたいという野心を抱くきっかけとなりました。

​ ナタリア・ギンズブルグとアンナ・マリア・オルテーゼなど、20世紀イタリアの女性作家たちからも深い刺激を受けています。特にオルテーゼの『ナポリの海は沸き立たない』などは、フェランテ作品に共通するナポリという都市の生々しいリアルな描写に大きな影を落としています。

 ヴァージニア・ウルフをはじめ、アニー・エルノーやインゲボルグ・バッハマンといった、女性の身体性・母性・内的葛藤を容赦なく掘り下げる文学的伝統を継承しています。

 作品の最大の核は、主人公エレナ(レヌ)とリラという二人の女性の生涯にわたる結びつきです。単なる親友関係にとどまらず、相互の強い憧れ、嫉妬、競い合い、劣白感、そして深い理解が混ざり合った複雑な関係性が描かれます。タイトルである天才的な友人がどちらを指すのかという問い自体が、二人のアイデンティティが鏡のように互いを映し合っていることを象徴しています。

 貧困と暴力に満ちたコミュニティから抜け出すための手段として「学び」と「書くこと」が大きな意味を持ちます。学問を通じて外の世界へ羽ばたこうとするエレナと、圧倒的な頭脳を持ちながら家庭環境から進学を阻まれ町に残るリラ。二人が歩む対照的な軌跡を通して、生まれ育った階層や環境が個人の人生に与える壁と、それを突破しようとする痛みが浮き彫りになります。

ジェンダー

 当時のイタリア社会に深く根付いていた男性優位主義、家庭内暴力、そして街を支配するカモッラ(マフィア)の影が色濃く描かれています。女性たちが家族や夫の所有物のように扱われる抑圧的な環境の中で、自立した自我をいかに保ち抗うかというジェンダー的視点も重要なテーマです。

 リラが抱く「消失(境界線が壊れて世界が流れ込んでくる感覚)」という独特の感覚を通して、存在の脆さや不確かさが表現されます。また、荒々しく魅惑的で逃れがたい存在としての都市ナポリそのものが、彼女たちの精神構造を決定づける巨大な背景として機能しています。

物語世界

あらすじ

第1部『リラとわたし』:1950年代のナポリの下町。真面目なエレナ(レヌ)と、凶暴なまでの天才性を持つリラは、互いを刺激し合いながら育ちます。エレナは周囲の支援で中学校・高校へと進学しますが、リラは父親に拒絶されて進学を断念。リラは独学で学び続けつつ、家業の靴屋で斬新なデザインの靴を作ります。やがて美しい娘に成長したリラは、貧困から脱出するため、16歳で裕福な食料品店主ステファノと結婚。しかし披露宴の当日、夫がマフィアに自作の靴を渡していたことを知り、深い激怒と裏切りのなかで結婚生活をスタートさせます。

第2部『新しき名前の物語』:結婚直後からステファノの激しいDVに晒されるリラ。療養のために訪れたイスキア島で、リラはエレナが長年片思いしていた知的な青年ニーノと激しい恋に落ち、駆け落ちして夫のもとを去ります。しかしニーノとの生活もすぐに破綻。妊娠していたリラは下町に戻り、誠実な幼馴染エンツォの助けを得て息子を出産します。一方エレナは、失恋の痛みを勉強にぶつけ、ピサの最高峰の大学へ進学。自伝的小説を書き上げて作家デビューを果たし、名門家系出身の学者ピエトロと婚約します。

第3部『逃亡ととどまりの物語』:1970年代、社会不安が広がるイタリア。エレナはフィレンツェで結婚生活を送り、二人の娘に恵まれますが、ワンオペ育児と家事により執筆活動が停滞し、抑圧感を募らせます。一方ナポリのリラは、過酷なソーセージ工場で低賃金とセクハラに耐えながら労働運動に関わり、やがて独学で初期のコンピュータ技術を習得。エンツォと共にIT分野で成功を収めていきます。そんな中、エレナの前にかつての恋人ニーノが再び現れます。魅惑的で洗練された彼に抗えず、エレナは夫と娘たちを置いてニーノと駆け落ちします。

第4部『失われた女の子の物語』:エレナはナポリに戻りニーノと同居を始めますが、彼が無節操で不誠実な女たらしの本性を露呈し、関係は破局。エレナはリラと同じアパートに住み直し、二人はほぼ同時期にそれぞれ娘を出産します(エレナはイマ、リラはティナと命名)。二人は互いの子供を協力して育て、エレナはナポリの現実を描いた本で国際的な名声を得ます。しかしある日、リラの愛娘ティナが街中で痕跡もなく突然失踪。警察の捜索も空しく、二度と戻りませんでした。この悲劇によってリラの精神は完全に壊れ、彼女は次第に世界から自分を消去したいという欲望に憑りつかれます。やがて子供たちが大人になった数十年後、60代になったリラは自らの写真や衣類をすべて切り刻み、完全に姿を消します。残されたエレナのもとに、幼少期に地下室の格子穴に落としたはずの「二つの人形」が差出人不明で届き、物語は幕を閉じます。

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