始めに
チャールズ・ディケンズ『我らが共通の友』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
ディケンズの作家性
トバイアス・スモレットはディケンズが幼少期に最も愛読した作家の一人です。強烈な個性を持つ登場人物の造形や、冒険的なストーリー展開に直接的な影響を与えました。
した。
ヘンリー・フィールディングからは社会全体を広大なパノラマとして描く手法や、皮肉とユーモアを交えた語り口を学びました。ダニエル・デフォーからは逆境に立ち向かう主人公の心理描写や、物語のディテールを緻密に積み重ねるリアリズム技法に影響を受けました。オリヴァー・ゴールドスミスからは善良な人々を描く温かいユーモアと、悲哀の表現手法に影響されました。セルバンテスの影響理想主義的な主人と現実主義的な従者のユーモラスな関係性は、ディケンズの初期の傑作『ピクウィック・クラブ』(ピクウィック氏とサム・ウェラー)の造形に深く反映されています。ル・サージュからは主人公が社会の様々な階層を渡り歩きながら世相を描き出すピカレスク小説の型を吸収しました。
『千一夜物語』もディケンズの想像力を最も刺激したテキストの一つです。劇的なストーリー構成や、作品に漂う幻想的童話的な要素の源泉となりました。
トーマス・カーライルもディケンズが師と仰いだ人物で、資本主義社会や格差への強い憤り、社会批評精神、そして熱量の高い歴史観は『ハード・タイムズ』や『二都物語』に決定的な影響を与えています。
ワシントン・アーヴィングが描いた温かいクリスマスの風習やノスタルジックな情景描写は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』などの作品形成に大きく寄与しました。
シェイクスピアは悲劇と喜劇をあざやかに混交させる劇的な構成力や、感情豊かなセリフ回しにおいて常に参照されていました(『リトル・ドリット』における『リア王』のモチーフなど)。
ごみ処理場の寓意
物語の中心となる莫大な遺産の源泉は、ロンドンの広大なゴミ山です。ディケンズは、人々が群がり奪い合う富が、実際には社会の排泄物や汚物と同じ根を持つことを鮮烈な皮肉として提示しました。金銭は人を惑わせ、人間関係を歪める不吉な存在として描かれています。
暗く濁ったテムズ川は、死体をあさる人々が集まる死の領域でありながら、罪を洗い流して新しい生を与える浄化と再生の空間でもあります。ジョン・ハーモンは川での事件によって「死亡した」と誤認されることで過去を捨て、別のアイデンティティとして誠実に生き直します。ユージン・レイバーンは川に投げ込まれて死の淵をさまようことで、それまでの怠惰な生き方を改め、真心から人を愛する精神を取り戻します。
資本主義批判
ヴェネリング夫妻に代表される、当時の社交界の浅はかさや偽善を痛烈に風刺しています。また、独学で階級上昇を目指しながらも、激しい自尊心と嫉妬心によって身を滅ぼしていく教師ブラッドリー・ヘッドストーンを通じ、階級移動の難しさとそれに伴う精神的歪みを描いています。
最初は富を追い求めていたヒロインのベラ・ウィルファーが、金銭がもたらす醜さを目撃する中で成長し、真の愛と誠実さを選択するストーリーが軸となっています。人間を評価する真の基準は金や肩書ではなく誠実な心にあるというディケンズの確信が提示されます。
物語世界
あらすじ
巨万の富を生む「ゴミ山」の遺産相続を巡り、身分を隠した相続人、金に翻弄されるヒロイン、テムズ川に生きる人々が交錯する群像劇です。
偏屈な富豪ハーモンが亡くなり、莫大な遺産は「見知らぬ娘ベラ・ウィルファーと結婚すること」を条件に息子のジョンに遺されます。しかし、海外から帰国したジョンは事件に巻き込まれてテムズ川に投げ込まれ、別人と間違われて死亡したと報じられます。
一命を取り留めたジョンは「ロークスミス」と偽名をつかい、繰り上げで遺産を引き継いだ老夫妻ボフィン家の秘書として潜入します。ボフィン家に引き取られたベラは金への執着を露わにしますが、ボフィン氏があえて金で心が荒んだ強欲な主人を演じて見せたことで、金の恐ろしさを知り富よりも純粋な愛を選ぶ精神的成長を果たします。
一方、「ジョンの死体」を川から引き揚げた貧しい水夫の娘リジーを巡り、怠惰な弁護士ユージンと、嫉妬深い教師ブラッドリーの三角関係が勃発。激高したブラッドリーはユージンを襲撃して川へ投げ込みますが、重傷を負ったユージンはリジーに救われて改心し、階級を超えて彼女と結ばれます。
ジョンはついに正体を明かし、金に惑わされず真実の愛を選んだベラとともに、晴れて正当な遺産と幸せな家庭を手に入れます。




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