始めに
今村夏子『こちらあみ子』解説あらすじを書いていきます。
語りの構造、背景知識
今村の作家性
今村夏子は小川洋子の影響が大きいです。
小川洋子は傾向としてはモダニズムからの影響が大きく、川端、太宰、立原、金井美恵子、大江、春樹、オースター、ブローティガンなどをこのみ影響されました。金井美恵子『愛の生活』が、『妊娠カレンダー』など、初期には特に影響が大きいです。日常を冷徹な観察のまなざしで見つめ、グロテスクな様相を浮かび上がらせる手法が共通します。川端の幻想的世界からの影響も大きく、『雪国』的信頼できない語り手は初期から得意とします。
今村夏子もそのような信頼できない語りと、日常の不穏を得意とします。
タイトルの意味
タイトルはヒロインあみ子の社会性のなさを象徴します。
どうもあみ子は発達障害があるようで、対人関係が不得意で空気を読むことができません。友達はおらず、誕生日のプレゼントのトランシーバーに「こちら『あみ子』」と呼びかけても、応答はありません。
あみ子のせいで家族は崩壊していきます。母は寝たきりに、兄は暴走族になってしまいます。
それでもあみ子は純粋無垢で、周囲のそのような葛藤を知ることはありません。
物語世界
あらすじ
広島の公立小学校に通う5年生の「あみ子」は、純粋無垢ですが他人の気持ちが分からず、授業中に騒ぐなど、トラブルメイカーです。同級生の「のり君」が好きだが、「のり君」は迷惑です。家族が誕生日パーティーを開いてくれても、プレゼントのトランシーバーに夢中で、ご馳走を残します。友達はおらず、「こちら『あみ子』」と呼びかけても、応答はありません。
妊娠中だった母のさゆりが死産します。良かれと思って庭に「弟の墓」を作る「あみ子」ですが、それまで気持ちを押さえていた母は、墓を見て泣き叫び、以来寝て過ごす状態になります。妹思いの優しい兄の考太も暴走族になります。
中学生になるあみ子は、不良の兄が校内で恐れられている為にイジメはないものの、相変わらず友達はいません。会社員の父の哲郎は、制服のまま寝て何日も風呂に入らない「あみ子」に、スーパーの惣菜を与えることしかできません。
自分の部屋で聞こえる謎の音を「成仏できない弟の霊」だと騒ぐ「あみ子」ですが、父は苦しげに「女の子だった」と告げるものの、父の気持ちが分からない「あみ子」は、空想のお化けたちと無心に遊びます。
公立高校に進んでも、テスト中に「お化けなんかないさ」と童謡を歌う「あみ子」は相変わらずです。あみ子に絡まれた「のり君」は、耐えきれずにあみ子の鼻の骨が折れるほど殴ります。
諦めたように「引っ越そう」と話す父に、「離婚だ」と興奮するあみ子。
部屋の物音は、ベランダに巣を作った鳥の仕業でした。高校を中退し、父と二人で田舎の祖母の家に移るあみ子ですが、父は広島の家に帰ると言います。あみ子一人が祖母の家に預けられました。
朝の海岸でお化けたちの乗った小舟を見送った「あみ子」は、水が冷たいという人声に、元気に「大丈夫!」と応えます。




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