始めに
小川洋子『妊娠カレンダー』解説あらすじを書いていきます。
背景知識、語りの構造
モダニズム
小川洋子は傾向としてはモダニズムからの影響が大きいです。
川端、太宰、立原、金井美恵子、大江、春樹、オースター、ブローティガンなどをこのみ影響されました。
金井美恵子『愛の生活』が、本作『妊娠カレンダー』など、初期には特に影響が大きいです。日常を冷徹な観察のまなざしで見つめ、グロテスクな様相を浮かび上がらせる手法が共通します。
特に影響が大きいのは村上春樹で、その静謐で翻訳文風の語りのスタイルからの影響が大きいです。また、非線形の語りにより一義的な解釈を許さないプロットも、春樹とも重なります。
川端の幻想的世界からの影響も大きく、『雪国』的信頼できない語り手は初期から得意とします。
語りの構造
本作は、等質物語世界の語り手「私」を設定し、その姉の妊娠から出産までを描きます。
12月29日月曜日、姉の妊娠が発覚し、そこから少しずつ私の認識のなかから、日常の歪みが現れていきます。
私の視点から、妊娠に伴う変化をグロテスクに描きます。
内側から破壊するもの
本作では、妊娠というものをネガティブに描いていて、それが防かび剤と重ねられて描かれています。
私はある時、グレープフルーツなどの防かび剤PWHが人間の染色体を破壊する、と書いてあったことを思い出します。PWHは、胎児の染色体も破壊するのか、と私は思い、グレープフルーツでこしらえたジャムを姉に食べさせることが習慣になります。
胎児もPWHも、体の中にあって、内側からその存在を蝕むような存在として私の目には捉えられていて、そんな胎児をPWHによって破壊しようと思いつく、私の歪んだ心理が現れます。
物語世界
あらすじ
12月29日月曜日、姉の妊娠が発覚しました。しかし、姉はそっけなく、「わたし」の前では義兄とその話をしません。
そしてつわりが始まります。姉はグラタンのホワイトソースを内蔵の消化液に例えたり、料理の匂いに敏感になります。わたしと義兄は、姉が家にいるときは料理を避けたり庭で食事したり、姉に気を遣います。
あるとき、わたしはバイト先のスーパーからグレープフルーツをもらいます。そして以前参加した環境セミナーのパンフレットに、防かび剤PWHが人間の染色体を破壊する、と書いてあったことを思い出します。PWHは、胎児の染色体も破壊するのか、と私は思います。
わたしは大量のグレープフルーツでジャムを作ります。つわりが終わった姉は、ジャムを貪り食べるのでした。
やがて、わたしがグレープフルーツのジャムを作ることが習慣になり、そのたびに、この中にPWHはどれくらいあるのかと思います。
8月11日火曜日、バイトから戻ったわたしは、陣痛が始まり病院へ行く旨の義兄からの手紙を目にします。急いで病院に向かうと、かすかに赤ん坊の泣き声が聞こえた気がします。
わたしは破壊された姉の赤ん坊に会おうと、新生児室に向かいます。




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