芥川龍之介「トロッコ」解説あらすじ

芥川龍之介

始めに

 芥川龍之介「トロッコ」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

アナトール=フランス、森鴎外流のヒューマニズムとリリシズム

 芥川龍之介はアナトール=フランスからの影響が顕著で、そこから合理主義的科学的ヒューマニズムを展開していきました。『地獄変』に描かれるテーマを芥川自身の芸術至上主義を体現するものではないと、以前そちらの記事に書きましたが、芥川龍之介は倫理やモラルを重視するヒューマニストです。

 またロマン主義的なリリカルな意匠は手本とした森鴎外からの影響が顕著です。

オスカー=ワイルド、ショーのシニズム

 また芥川龍之介ら新思潮派の作家は、ショーやワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)といった英国の演劇から顕著な影響を受けています。

 本作もショーやワイルドを思わせる、シニカルな文明批評の眼差しが特徴です。

 またワイルドに似た、象徴的なモチーフの効果的な利用が印象的です。

題材について

 本作は、湯河原出身のジャーナリスト力石平三が、熱海軽便鉄道が軽便鉄道へ移る工事を見物したときの回想手記を、芥川が潤色したものとされています。

 漱石『坑夫』似にて、元になったエピソードから、作家が脚色した物語になっています。

物語世界

あらすじ

 大正時代、小田原・熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まります。

 沿線に暮らす8歳の良平は、工事現場で使う運搬用のトロッコに惹かれます。ある日彼は、トロッコを押している土工に頼み、一緒にトロッコを押すことになります。

 良平は村から離れるにつれ、帰りが不安になります。夕暮れ、土工に帰るようにといわれて、良平は唖然とします。もう暗くなるのに、トロッコに乗ってきた遠い道を徒歩で帰らなければいけません。

 彼は線路を走りだし、草履も羽織もふり捨て、暗い坂道を駆け、家に駆け入り、良平は泣き出します。

 良平は大人になり、東京に出て、出版社の校正係となりました。しかし彼はこの時の体験を思い出すことがあります。良平の前には、今でも薄暗い藪や坂のある路が一筋、細々と続いています。

参考文献

・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』

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