芥川龍之介「芋粥」解説あらすじ

芥川龍之介

始めに

 芥川龍之介「芋粥」解説あらすじを書いていきます。

背景知識、語りの構造

アナトール=フランス、森鴎外流のヒューマニズムとリリシズム

 芥川龍之介はアナトール=フランスからの影響が顕著で、そこから合理主義的科学的ヒューマニズムを展開していきました。『地獄変』に描かれるテーマを芥川自身の芸術至上主義を体現するものではないと、以前そちらの記事に書きましたが、芥川龍之介は倫理やモラルを重視するヒューマニストです。

 またロマン主義的なリリカルな意匠は手本とした森鴎外からの影響が顕著です。

オスカー=ワイルド、ショーのシニズム

 また芥川龍之介ら新思潮派の作家は、ショーやワイルド(『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』)といった英国の演劇から顕著な影響を受けています。

 本作もショーやワイルドを思わせる、シニカルな文明批評の眼差しが特徴です。

理想と現実

 本作は、手に入った途端に夢に幻滅してしまうという心理が描かれており、こうしたモチーフは芥川を愛好した三島由紀夫作品(『金閣寺』『サド侯爵夫人』)にもしばしば見えます。

 平安時代の冴えない五位の役人は、芋粥を飽きるほど食べることが夢だったのに、それが現実になると、たちまち幻滅してしまいます。

 しばしば我々は恋愛や仕事で理想を追い求め、それが手に入ると幻滅することがありますが、本作はそうした心理的合理性を描いています。

物語世界

あらすじ

 平安時代。主人公の五位は、摂政・藤原基経の役所に勤める、四十を越した冴えない小役人です。彼は日ごろ同僚からも馬鹿にされ、情けない日常を送ります。しかし、そんな彼にも、芋粥を飽きるほど食べる夢がありました。

 ある集まりの際につぶやいた、その願いを聞いた藤原利仁が了解し、彼と領地の敦賀に出向きます。利仁の館で用意された、大鍋に一杯の大量の芋粥を目にして、五位は食欲が失せます。

参考文献

・進藤純孝『伝記 芥川龍之介』

コメント

You cannot copy content of this page

タイトルとURLをコピーしました